ちょっと間が空いてしまいましたが、今日は前回に引き続き、森博嗣氏のS&Mシリーズ2作目
「冷たい密室と博士たち」について書いていきたいと思います。
(いつになく真面目な出だし!)
前回も書きましたが、S&Mシリーズは10作品あるわけで、
多分一番有名であろう「すべてがFになる」の次は、どれを紹介しようかと悩んでいたんですよ。
でも、結局2作目を紹介することにしました。その理由は後ほど。
シリーズの2作目という立ち位置ではありますが、森博嗣氏の実質処女作。
正直、1作目に比べたら地味です。
だって1作目は孤島・天才・バラバラ死体というインパクト。
でもね、ろこぶはこの「冷たい密室と博士たち」、シリーズの中でもめちゃ好きなんですよね。
(完全に自己満足)
こんにちは、読書を思い知れ!ろこぶです。
読書って楽しいですよね。
それでは早速おおまかな内容を…。
冷たい密室と博士たち DOCTORS IN ISOLATED ROOM
だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女2名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?
真相が気になって仕方ない萌絵は事件の究明に奔走するが…。
…超ざっくり。
低温度実験室っていうのは文系のろこぶには想像つかないものなのですが、実験室・実験の描写は細かく書かれています。
ほんとに目に浮かぶくらい。すごくリアリティあっておもしろいです。
しかし、実験内容については全然ワカラナイ。
一応説明はあるんだけど、まったくわからないの。
でも話の本筋に問題は、ないです。あったら困るよ…。
あと、これは賛否両論あるかと思うんですが、この作品に関しては、
事件のトリック、動機などは明快です。
(ろこぶが謎解きできたっていう意味ではなく、スッキリとした回答が出ている、ということ)
謎が残る、みたいなことはないので、
「結末の見解は読者に委ねます…」
みたいな終わりが好きじゃない人でも満足行く内容だと思います。
よく言えばわかりやすく、悪く言えばありがちな、事件。
(こんな特殊な環境でありがちも何もないか…)
この作品で特筆すべきところは、事件そのものではないです。(ろこぶ的に)
この作品は、S&Mシリーズ主要キャラクタの要素が、これでもかと詰め込まれている。
いわば犀川と萌絵の2人についてがぐっと掘り下げられ、彼らの本質が見える作品になっています。
(この作品で出てくる犀川の同僚、喜多助教授はこれからも随所で登場します。ファンが多い。)
お嬢様学生の萌絵の無鉄砲さ、素直さ、頭の良さ、傲慢さ、可愛らしさ。
冷静に見える犀川の天才さ、無神経さ、熱さ、危険さ、優しさ。
人は様々な自分を持っていて、そのどれもが自分にとっての本質であるかもしれないということを
思い知らされるような本でした。
この本は、犀川の言葉が本当にいいです、シリーズでも屈指の良さ。
「責任と責任感の違いがわかるかい?」
「面白ければ良いんだ。面白ければ、無駄遣いではない。子供の砂遊びと同じだよ。面白くなかったら、誰が研究なんてするもんか」
「裏の裏は表だからね」
「最後は失敗だった」
「死にたかったろうに……」
ろこぶは、この作品で一気に犀川のことが好きになりました。
真面目な話、2020年9月現在。
様々な場面で「死」についての報道が多く出ており、気持ち的にふさぎがちな方も多いと思います。
死は身近にも存在し、思いもしない方がその道を選んでしまう。
または防ぎようのない事故・病気などで生涯を終えてしまう。
そういったニュースを本当に頻繁に目にしますし、ニュースにならない死だってこの世には溢れています。
そんな中で、「人が死んでしまう」ことが題材になることの多いミステリを紹介するのはどうなのかな、と、ろこぶは考えていました。
自分が好きな本、自分にとっての人生が変わった本、それについて書きたい、というだけであっても、不謹慎ではないか、と考えていました。
しかし、長いこと悩んで、今回この本を紹介することに決めたのは
「冷たい密室と博士たち」が、人の死の「悲しさ・虚しさ」についてを書いている本だからです。
誰かを消したいほど憎むとき、それが必ず自分をも苦しめること。
自分が良かれと思って選んだ死の道が、周りをどれだけ悲しませるかということ。
「生きてさえいれば」と考えられなくなったとき、はじめて一人になってしまう、ということ。
ろこぶは「冷たい密室と博士たち」を読んで、自分から死に関わることの怖さ、悲しさを感じました。
また、生命があっても、心が死ぬようなことがあってはいけない、とも感じました。
この本のタイトルの「冷たい密室」は、事件の合った低温度実験室のことだけではありません。
悲しく、自ら死に関わりに行く人の心も表しているように思えるのです。
この本では殺人が起こります。
それでも、きっと読む方一人ひとりが命や死に向き合い、感じることが出来るはずです。
自分に自信がなく、役に立たなくても、生きていていいんだと。
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